TEMPEST

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芸術的文字入力方式では文字入力のスピードや正確性を重視する一般の文字入力インタフェースとは異なり,いかに思いや感情を演奏として表現できるかという点が重要になる.そのためにはユーザが任意の文字を好きなタイミングで入力でき,そのときの出力音を自由にコントロールできることが望ましい.しかし,携帯電話やポケットベルのような文字入力方式では入力文字に対して使用するキーが決まっているため,文字に対する出力音が固定され,ユーザの意図しない音楽が生成される.

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この問題を解決する方法として文字入力鍵の打鍵音を変更する方法と中継音を挿入する2つの方式を考えた.ここでは,前者の方式についてのみ簡単に説明する.前者の方式は,文字入力鍵(打鍵時に文字と楽音を生成する鍵)の打鍵音(鍵の打鍵により出力される音)を変更する方式である.例えば,演奏鍵(文字入力に用いない鍵)の演奏と協和する音を文字入力鍵の打鍵音に割り当てる方法が考えられる.このようにすることで,ユーザは演奏鍵の演奏を通して間接的に文字入力音をコントロールできる.具体的に25鍵程度の鍵盤を用いて文字入力を行う場合,右図のように鍵盤を左右に分割し,左側を伴奏(左手)領域,右側を文字指定(右手)領域に割り当てる.右手の入力の組み合わせで文字指定し,左手の伴奏により芸術性を付加する.文字指定方式としては,ポケットベル文字指定方式や,縦分割文字指定方式などいくつか提案した.また,右手で打鍵したときに出力される音に芸術性をもたせるため,出力音を左手で入力する和音(伴奏)に応じて変化させるようにした.具体的には,伴奏と不協和音にならない音集合を導出し,文字指定領域にその音を敷き詰めることで違和感のない文字入力演奏を実現した.一例を挙げると左手の伴奏がド3(数字:オクターブの高さ), ミ3,ソ3だったとすると,右図に示すように文字指定領域の左端から順にそれらを敷き詰める.

この文字入力演奏は,電子メール,ブログ,チャットなどテキストベースのコミュニケーションにおいて感情や思いをより良く表現し他者に伝えるためのツールとして活用できると考えられる.この演奏と同期する文字入力が感情伝達に有効か200名弱の被験者を対象とした主観評価実験からテキストだけの表現と比較して豊かに感情伝達できることが証明された.

竹川佳成, 寺田 努, 塚本昌彦, 西尾章治郎, “TEMPEST: 音楽的表現が可能な文字入力システム,” 芸術科学会論文誌, Vol. 6, No. 2, pp. 88–97 (2007年7月).

Takegawa, Y., Terada, T., and Nishio, S. “TEMPEST: A Text Input System for Musical Performers,” Proceeding of International Conference on Entertainment Computing (ICEC2006), pp. 322–325 (Sept. 2006).