研究内容
楽器の演奏技術の向上には多大な時間や労力を必要とするため敷居の高さに利用を断念したり,熟達効率の低さから挫折してしまう演奏者が多い.この問題を解決するため,筆者らの研究グループは鍵盤上部に設置したプロジェクタを用いて鍵盤上や鍵盤の周囲に打鍵位置情報など演奏補助情報を投影するピアノ学習支媛システムを構築してきた.筆者らのこれまでの評価実験では,ピアノ初心者は未熟な段階において楽譜上の音符を個別に認識していたが,熟達するにつれ一連の複数の音符をまとまり (チャンク) として認識し演奏している様子が観測された.このチャンク形成過程を明らかにすれば,熟達度の推定や学習方略の提案など効率的な学習支媛システムの構築に応用できよう.そこで,本研究ではピアノ演奏熟達におけるチャンク形成過程に着目した実験と分析を行った.チャンク形成過程を調査するため,成人ピアノ初級者を被験者として課題曲を 1 日 30 分間練習し,練習後に楽譜上に主観的チャンク (まとまりを感じる音符列) を記述してもらった.チャンク記述結果より,熟達するにつれチャンクの変容に一定の傾向があることが明らかになった.
発表歴
- Takegawa, Y., Hirata, K., Tayanagi, E. and Tsubakimoto, M. “Analysis of a Chunk-Based Learning Process in a Piano Learning Support System,” Proceedings of World Conference on Educational Media and Technology (EdMedia2015), pp. 1577–1585 (June 2015).
- 田村速人, 竹川佳成, 平田圭二, 田柳恵美子, 椿本弥生,“成人ピアノ初級者の演奏熟達におけるチャンク形成過程の分析,”情報処理学会研究報告, Vol. 2014-MUS-102, No. 8, pp. 1–8 (2014年3月).